2024年1月8日月曜日

「心」は「ooo」



 

 

九万三千三十二首も作った

大歌人だった明治天皇の短歌は好きだが

 

あさみどり澄みわたりたる大空の広きをおのが心ともがな

 

など読むと

至尊調のよさがよく出ていて

やっぱり

いいじゃないか

と思う

 

あさみどり色に澄みわたった

この大空の広さを

そのまま私の心としたいものだなあ

と歌っている

 

大きく広がる

さわやかな澄んだ空のイメージを描きつつ

それをそのまま自分の願望としている

 

日本語はすべての音が

子音+母音

または

母音のみで構成されている

言語だが

この歌の場合

使用されている母音それぞれの数は

a」が9

i」が6

u」が2

e」が0

o」が14

なっている

 

この短歌一首で使用される母音数31音のうち

o」の14回という数は圧倒的に多く

次いで「a」の9回という使用数も多く

さらに

e」の0回というのが特徴的だろう

 

asamidori

sumiwataritaru

oozorano

hirokiwo

onoga

kokoro

tomogana

 

このようにローマ字で書いてみても

まだ明瞭ではないが

母音だけ抜き出して次のように書いてみると

わかりやすい

 

aaioi

uiaaiau

oooao

ioio

ooa

oooooaa

 

a」も「o」も

日本人の発声において

もっとも自然に発せられる母音であり

いちばん楽に発音できる音で

口のかたちを無理に変化させる必要がないから

喜んだり

驚いたり

なにかに気づいたり

疲れたりする時に

思わず出してしまったり

うっかり出してしまったりする

そういう意味で

心の動きにいちばん直結した音声といえる

 

明治天皇の歌の

至尊調と呼ばれる大きな雰囲気の秘密は

おそらく

母音「a」と「o」の使い方にある

 

母音のどれを選び

どう配分して使うか

どうまき散らすかで

歌の雰囲気は決まるが

明治天皇は「a」と「o」の歌人だった

おそらく言える

 

母音「a」と「o」は

日本人にとっての基本のもっとも自然な音なので

これを巧みに使った明治天皇の歌を読んだり

聞いたりすると

多くの日本人は快く感じるのだろう

 

短歌や

さらに広く詩歌というものが

意味だけでなく

音の配列の芸を発揮する場でもあり

とりわけ母音のリズムがベースとなる場なのだ

と知っておくのは

意味重視に偏り過ぎた現代では

かなり重要なことだ

 

ポップスの歌詞なども

「歌」である以上

音や母音の配列を重視するので

歌詞を追っていると

ちょっと意味がわからないところや

もっと他にいい言葉が入れられるはずなのに・・・

というところに出会うことがあるが

あれは

音声を重視しているために

意味を二の次にした選び方をしている場合が多い

 

ところで

使われている母音だけで表記してみると

「心」というのは

ooo」となる

 

これは

ひょっとしたら

日本語の「心」という言葉の

いちばんの

秘密かもしれない

 

「心」は

o」だけでできていて

しかも

ooo」なのだ

 

 





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