2012年9月16日日曜日

九月句 (三)



九月十日

放射能忘れてみたし秋刀魚欲し

大なゐを恐れつつ聞く鉦叩

まだまだと法師蝉鳴く日の盛り

秋の蚊のなにが哀れかまた刺され

秋の空この世の果ては高く澄み

ごたごたのまゝの日本の良夜かな

九月十一日

嘘つぱち風流ぶつて残暑など

流星のむしろ地上にあまたなり

台風の少なき年よ醜き世

二百十日生きてゐたよと言ふばかり

新蕎麦の喉滑る時さとりあり

信じ得る少なきひとつちちろ虫

鈴虫を鳴かせて駅舎去り難し

酔芙蓉詠むには難しまたいつか

糸瓜棚なき界隈の若旦那

ほんたうは茄子の紫紺に惚れてゐる



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