死んでしまっているのにふしぎだ
買い物に出かける
用足しに出かける
手紙には返事を書く
払うべきお金を払う
喜怒哀楽のようなものが少しはある
あれこれについて考えたりする
死んでしまっているのに
わずかのことば
わずかの動作
どれにもたましいは動いていないのに
死んでしまっているのを自覚しているぼく
ぼくはほんとうに死んでいます
きぼうも
よろこびも
おもしろみも
これほどまでにない
ということを
生かされている
ほんとうに
ほんとうに
なにもおもしろいものがない
街に出たり
本や映画を見たり
酒を飲んだり
こみゅにけーしょんしたり
草花を植えたり
青空を見つめたり
いったい
なにがおもしろいのか
わからない
まったく動かないたましいを
日から
日へと
運ぶ
楽シンデイル
意義深クシテイル
と自慢ごっこする人々から離れて
いや
離れられずにかたわらに居させられて
ぼくはぼくの味気なさに
やはり馴染めなんかできずに
ぼくの砂漠に
やはり定住なんかできずに
ぼくの言うことのなさに
黙ってもおれずしゃべっちゃったりして
死んでしまっているのにふしぎだ
からだを動かしたり
たましいをさがしたりしている
持ちこたえる力がどこから来るのか
ふしぎだ
地盤も
神も
天使も
友も
助けも
なにもありはしないと知っているのに
知らされてきたのに
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