2019年12月22日日曜日

人生のこうふく




一生の楽しきころのソーダ水    
富安風生


もう
うちに炬燵はない

炬燵があったころ
子どものころ
少年のころ

親たちはとおくへ買い物に出て
ひとり
炬燵に入って
本を読んだり
みかんを食べたり

あれは
人生のこうふく
なかなか読み終わらないような
ながい本を
ときどき
うとうとしながら
読み続けたり
なにかを読み終えた!
と思いたくって
みじかい小説に移ってみたり

そんなふうにしているうち
外はもう暮れがた
まだ帰ってこない親たちは
いまは
どこらへんかしら?
など
思いながら
お茶でも
また淹れようかな
と立ち上がったりする

あれは
人生のこうふく




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