2019年12月7日土曜日

分岐点

 

なにかを文字で記したり
書いたり
そんなことを
ついに
すっかりやめてしまうという
はれやかな夢を
目覚め際に見ていた

そうして
無数の透明な原子の粒になって
からだといい
こころといい
それまでわたしを構成していたものが
四方八方に
飛び散っていくさまを見ながら
目覚めた

文字ばかりか
からだも
こころも
思念も
感情も
障壁でしかないのだから
ようやく
生きることの入り口に来たかと
うれしかった

起き出て
歯を磨くために
ハミガキをチューブからすこし出すと
まっしろい龍になって
洗面所の天井に立ちのぼり
しばらくゆっくりと舞ったあと
そのまま天井を抜けて消えていった

もう一度
ハミガキをチューブから出すと
それは龍には変化しなかった

チューブから出したハミガキが
龍に変化したり
しなかったりする
分岐点が
やはり気になるのである





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