2021年6月20日日曜日

アパリスィヨン

 

 

J’errais donc, l’oeil rivé sur le pavé vieilli

Quand avec du soleil aux cheveux, dans la rue

Et dans le soir, tu m’es en riant apparue

Et j’ai cru voir la fée au chapeau de clarté

Qui jadis sur mes beaux sommeils d’enfant gâté

Passait, laissant toujours de ses mains mal fermées

Neiger de blancs bouquets d’étoiles parfumées.

Stéphane Mallarmé  Apparition

 

 

 


自由詩のかたちを借りて

こまっしゃくれた

みにくい落書きのようなものを

わたしなんぞ

よくやるが

ほんとうなら

せっかく自由詩形を使うのだから

詩と呼べるようななにかを

ときには

充填したいもの

とも思う

 

詩形にほんとうの詩を

ぎゅうっと

あるいは

ほわぁんと

もわあんと

よそえるような人を

とても

尊敬しているのである

実際には

 

しかし

わたしの思うに

詩というのは

いかなるテーマについても

ことばを弄さない

書かない

ということで

たゞ

ことばだけを

その本源のすがたに裸にして

ころころ

好きに転がるままに

遊ばしてやることと思うので

なにかについて

書いてしまっている

なにかを

伝えようとしてしまっている

と見るや

もう

ダメだ、これ

思ってしまう

一気に

興ざめしてしまうのである

 

どこかに詩はないか

という探索は

わたしにとって

どこかに

なぁんにも言っていないことばはないか

なぁんにも載せていない詩形はないか

と求めて

さまようことに等しい

 

そういうものは

不完全なかたちのものなら

あちこちに

ないでもない

なにかについて言おうとして

言い間違う時や

言い終えた後のほんのちょっとの

ことばの乱れや

言いよどみの中などに

ヒョイと

なぁんにも言っていないことばの連鎖が

現われたりする

 

それこそ

わたしにとっての天使の出現であり

アパリスィヨンapparitionであったりする

なにものかの顕現であったりする

 

自由詩のかたちを借りての

こまっしゃくれた

みにく落書きのような書きよごしの数々も

みな

そんな一瞬の顕現との遭遇のため

言えば

言えないこともない

 

言おうか

 

言おう





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