僅かばかりのレコオドに僅かばかりの安物のスコア、それに、
小林秀雄『モオツァルト』
この世のいいものには
ぜんぶはムリでも
だいたいには触れたかな
と
傲岸なことを
思ったりもする
ひさしぶりに
深夜
ヴァーグナーの「ジークフリートのラインへの旅」や
「ジークフリートの葬送行進曲」
「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」などを
聴いていたら
あゝ、わたしもジークフリート
あゝ、わたしもトリスタンとイゾルデ
これ以上のものはこの世には存在しない
と感じる瞬間が
やはり
いくつもあって
人類というものの頂点がここにある
と再確認した
ヴァーグナーが好きか嫌いか
と
いったものでは
ない
ひとそれぞれ
さまざまに
死のみへと向かって生きてきて
どこかで
ヴァーグナーのこれらに出会う
と
あゝ、わたしもジークフリート
あゝ、わたしもトリスタンとイゾルデ
あゝ、ここに頂点が!
と
誰もが思ってしまう
ような
異様な魔品
しかも
所有する必要がない
ということに
音楽のすごさはあって
聴いてしまえば
到達!
オーディオ機器が必要ではないか?
コンサートホールが必要ではないか?
チケットが必要ではないか?
などなど
そういった話では
ない
聴いてしまえば
到達!
所有ということを超えた領域に
持って行かれてしまう
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