ペンにさせられた身にもなってみろ!
と叫びを浴びせられ続けて居たたまれなくなってしまって
誰も訪れないようなしょぼくれた淋しい浜に逃げていったら
水も準備しないでいったものだから喉が渇いてしまって
なにもかも乾き切ってしまったような集落のよろず屋の脇にようや
コーラの自動販売機で大嫌いなはずの缶コーラを買って
半分ほど飲んだらひょろひょろ背の高い痩せた女が脇から出てきて
目の前を過ぎていった
こちらを見たわけでもなく
こちらに気を留めたわけでもなく
歩いて行くというより
過ぎていく
と呼ぶのがふさわしいような通過のしかたで
行ってしまった
半分ほど中身の残った缶を持ったまま
女の過ぎていったほうを見ていたら
気づいたのです
わたしは浜に寄せ来る波の音だったのだと
波の音なんです
わたし
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