わたくしは故意に
「~だなァ」
「~かもネ」
などと
文末にカタカナを使うことがある
ある種の
文芸的文盲の人々には
これが
ずいぶんふざけた
いい加減な
表記のように見えることもあるらしく
時には
その人々の無知蒙昧さを
恥ずかしげもなく露呈して
「なんですか、あれは」
と言ってくることさえある
なんですか
って
開高建がよくエッセイで用いた語尾さネ
彼ばかりでなく
あの時代
いろいろな作家が
ユーモアと軽みをひょいと出そうという時
あんなカタカナづかいをしていた
吉行淳之介だって
安岡章太郎だって
遠藤周作だって
みんな使っていただろう
大衆文学にはなり切ってしまわないところで
中間小説のテイスト程度のところで
ぎりぎりで止まり
気まじめな言説にもサッと移行できるような語尾や文体が
わさわさと蠢いていた時代だ
そんな語尾を使わないで
ユーモアを出す井伏鱒二のような作家もいたし
超然と古風な文体で書いていた小林秀雄もまだ健在だった
詩歌寄りのほうでは
吉本隆明が「もんだい」などと
ややこしいはずの単語を平仮名書きをしていた頃でもある
せめて
戦後文学から中上健次ぐらいまでは
代表作ぐらいぜんぶ読んできてから
口を出すようにしろよ
文体や語尾のことについては
ナ