ゆくりなくも
ひさしぶりに木下夕爾の詩を読んで
「ひばりのす」など
まァ
なんて絶品なんだろう
と感嘆し直した
ひばりのす
ひばりのす
みつけた
まだたれも知らない
あそこだ
水車小屋のわき
しんりょうしょの赤い屋根のみえる
あのむぎばたけだ
小さいたまごが
五つならんでる
まだたれにもいわない
詩の好きなひとなら
こんな詩を読みたいと思うだろうし
こんな詩を書きたいと思うだろう
こども向きじゃないか
ずいぶん単純じゃないか
そう言われても
けっきょく
本屋や図書館のかたすみで
ひとをドキリと不意打ちできるのは
こんな詩なのだ
ぼくはむかし
20年ほど
塾で国語を教え続けた
できる子も
できない子も
たくさん
いた
できない子たちの多いクラスで
ほかの読みやすい詩とあわせ
木下夕爾のこの詩を
のんびり読んでいたこともある
ヒバリの巣など
もう見たこともない
見れる環境もなくなった
そんな時代の子たちも
あそこだ
水車小屋のわき
しんりょうしょの赤い屋根のみえる
あのむぎばたけだ
と言われると
ちょっと
楽しかったようだ
赤い屋根のしんりょうしょって
いいよね
水車小屋も
わきにあるんだってさ
そんなことを
言うともなく言っていると
なんで
しんりょうしょ
って
ひらがなで書いてるの?
とか
それに
むぎばたけ
も
ひらがな
ぼくだって
むぎばたけくらい
漢字で
書けるよ
そう
言いはじめる子が
出てくる
…来た!
…ここだ!
と
先生役のぼくは思い
なんでだろうね?
とほかの子たちにも
問いかけはじめる
そんな
こんなで
何十回
読んだとも知れない
木下夕爾だ
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