用事で行った遠い大学から
２０分も２５分もバスに乗って
最寄駅まで
最寄っていうのか、これを？
など
思いながら
揺られ
揺られて
混んでいるので
椅子には座れない
他の乗客たちも
まわりに立っている
座っているのは
大学生たち
バスに座っている大学生たちって
たいてい
バカに見える
どうしてだろうね？
答え
誰も本を読んでいないから
ピンポーン！
今どき
電車やバスで本を読むなんて
恥辱
老人かと思われちゃうよ
本なんか
読んでると
（という空気が漂っている秋津島であります）
たまたま
両隣りに大学の教授らしき人たちが
立っている
混んでいるといっても
ギチギチに混んではいないから
ちょっと離れて立っている
ふたりともスマホを見ている
ちょっと離れて立っている
ってのは
けっこう危険
それとなく目を横目にすると
おとなりさんがスマホで見ているものが見えてしまうが
そんなふうに見ているこちらの目が
それとなく横目になっているのは
スマホを見ている本人には気づかれない
で
横目だ
ぼくは横目が大得意
小学校の時のカンニングの時からして
名人芸の域に達していた
で
横目で見ると、だ
あ
あ
あ
あ
あ
水着の女の子さんたちの写真がずらっと並ぶサイトを
見ていらっしゃる
左側の教授
黒縁眼鏡＋半分白髪＋後頭部中央毛髪薄くなり初め＋
トゥミっぽいけれどトゥミではない大きな黒のビジネスバッグを肩
見ていらっしゃる
ときどき拡大する女の子さんには
それなりに共通点があるように感じられるが
ぼくの横目ではそこまでは完全には確認はできない
右側の教授はどうかしら？
あ
あ
あ
あ
あ
やっぱり
こちらは
もっとハードですなァ
洋物好き、と見たネ
金髪
栗毛
黒髪
とりどりですなァ
お姉さんたちのお体もゴージャスですなァ
ときどき拡大する写真は
あ
あ
あ
あ
あ
いいんですか、公共機関のバスの中で？
そ、そんな？
せ、せ、せんせ？
教授ふたり
その中高年の性をどうする？
大学帰りのバスの中で？
自由の国
スマホの中はＰＬ
パーフェクト・リバティー！
書き忘れたが
後者の教授は、あれは蓬髪っていうのかな、
生まれてから一度も梳かしたことのないような髪で
ボッ
と生えているというより
ほとんど
ゴッ
と生えていますナ
そんな髪のかたまりの下にオヤジ眼鏡
かさかさした肌
イチゴのようなツブツブ毛穴のある頬
服は
なんだかよくわからないブラウン系のジャケットにチノパン
バッグはリュックサックなんだろうけれど
ヨレヨレなので買い物バッグにも見える紺色っぽいの
ぼくは他人の性には介入しない主義である
だから
横目でジーッと見るが
べつに
ヘン！と小バカにしたりしないし
小突いたりもしないし
むしろ
横目で必要以上にジーッと見入ってしまったりする
そうして
あゝ、この教授たちも
解消せねばならぬおのれの性を抱えておられる
などと
人類への慈悲を心に湧き出させたりする
まこと
人間というのは
どんな服装をしても
どんな肩書きを負わされても
どんな仕事に就いても
しょせんは一個の性獣にすぎない
子どもといっしょのお父さんお母さんを見ると
その子どもの創世期のお父さんお母さんの為さったあれこれを
つまびらかに事こまかにいろどり豊かに想像せずにはいられない
お父さんの大いなる隠しどころの屹立ぐあいや
お汁の飛び出しぐあい
拭き取りぐあい
お母さんの大いなる隠しどころのお開きぐあいや
お悶えぐあい
お父さんのとは異なるお汁のじゅくじゅくぐあいや
さまざまなるお声のお立てぐあい
そんな
こんなの
ありとあらゆるお姿や光景を
お父さんお母さんをちらちら見ながら
ちょろっとじっくり見ながら
時にはじとじと見ながら
これでもか
これでもか
と想像しないわけにはいかない
まったく
なぁんて汚ならしいことをぐちゃぐちゃなさっちゃって
あゝ
あらゆる家庭はわいせつなるかな
あらゆる家庭を破壊せねば倫理の基本が築かれ得まい
厳格なるピューリタン精神を持つぼくはこう考えて
いま現存している人間全員の断種手術を断行することを主張したい
などと
過激なことをふとバスの中で思ってしまったのも
ふたりの教授のスマホ閲覧内容を横目で見てしまったからで
簡単に言えば
情けない教授ども！と思ったわけ
お前ら
バスの中でも論文のコピーぐらい読めや！
わきにいる他人の横目の能力ぐらい
しっかり恐れておけや！
そう思いながら
無事に駅について
水着の女の子さんたち系教授とも
洋物ハード系教授とも
別れ別れになるさだァめェ…
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