2018年5月5日土曜日

せっついてくる声が心の奥に



なんにでも瑕疵はある
あるにはある

照りつける太陽の下にいても
目を瞑れば
なにも見えない
瞼の裏はそれなりに暗い

むかし短歌ばかりやっていた頃
短歌は瑕疵を見つける言語ゲームだと気づいた
美しさのなかに闇を見つける
幸福のなかに来るべき破綻を嗅ぎとる
完璧のなかで未完成の欠落を悲しむ

なんとも簡単なゲームじゃないか

それが嫌になって
というより
馬鹿らしくなって
短歌ばかりやるのは
やめた

闇のない美しさを
破綻の永遠に来ない幸福を
未完成など思い出させもしない完璧を
言語ゲームでも
生活でも
創り出そうと決めた

以来
なんとも幸せにさせていただいた人生だ

単語配列を読むのが好きだから
いくらでも短歌は読むが
ビール好きが最初の一ニ杯を喜ぶように
読んでは読み
読んでは読み
プハ~ッと一瞬の喜びに浸る

けれども
断じてしない
おもしろくもない他人の短歌をじくじくと褒めようとしたり
文学めかした評言をしこしこしようとしたりは

読んでは読み
作っては作り
そのようにだけすべきことが
この世にはある

この世はあまりに広く
あまりに豊かに種々雑多

アラビア語のイスラム神秘派の詩歌をじゅうぶん読み終えたかい?
ロシア語の詩歌の名品を憂愁の霧にけぶる森の中で朗読してみたかい?
唐代の名詩を中国奥地の絶景のなかで朗読してみたかい?

そうせっついてくる声が
心の奥に
いよいよ大きくなってきている



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