2018年4月13日金曜日

むしろ懐かしさが霧や靄のようにふと訪れてきて



もちろん初めのうちは明るいところで待ちあわせをし
今日や昨日の出来事を二言三言たずねたりしながら
次第に小道を暗い暗いほうへ辿っていき
やがて街灯から少し離れた闇の中のベンチに腰を下ろすのだったが
それもたび重なるうちには
初めから闇の中のそのベンチで待ちあわせるようになり
後から来たほうが先に来ていたほうの肩に手を置いても
おたがいになにも言い交わさないほどにまでなっていったのだった

そんな頃からもうずいぶん時も経て
今では明るいところや明るい時間へ戻ることもとうにやめてしまっ
おたがいにどこからどこまでが相手か自分か
すっかりわからなくなってしまっていて
ごく稀に昔の頃の分断や離別のあった頃のことが懐かしくなりもするが
それとてもどちらが懐かしがっているのかわからず
むしろ懐かしさが霧や靄のようにふと訪れてきて
わたくしたちを鏡となして姿見しているのかと思わせられる



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