2018年4月6日金曜日

未来永劫影もかたちも気配さえないひと

 
自分には肉体がないかのように、
世界が存在しないかのように、
わたしが存在した場が
どこにもないかのように装うこと。
ルネ・デカルト


まるで詩人みたいに
けっこう書いてるよね、きみ

田中くんがそう言うので
調子に乗って

そうかなぁ、詩人みたい?
なっちゃおうかな、
なろうとしてみちゃおうかな、詩人
なろうなんて
醜い自己顕示欲に陥っちゃおうかな、
そのうち

そう返してみちゃいましたが
うそです

ぼくはなにも書いたことがないひと
ひとつさえ言葉を創り出したことのないひと
ものを感じるこころもなければ
ろくに考えるちからもまったくなく
まなざしもふわふわなら声もかぼそく
からだもカゲロウの羽みたいに透明で
なにひとつ為したこともなければ
足音さえしないほどの存在感のなさ
生まれてすいませんなどという必要さえない
はじめからいなかったし
いまもとってもすごくいないし
未来永劫影もかたちも気配さえないひと



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