2022年5月19日木曜日

富山の千歳という店の鱒寿司

 

 

よくある有名な駅弁のとは違う

富山の千歳という店の鱒寿司が届いたので*

笹の葉の上から切りわけて

ひと切れを皿にとって葉をひらいてみると

肉がけっこう白っぽい

 

つよい鱒は海まで泳いでいき

ふだんは蝦だの蟹だのを食べるそうだが

そうすると肉は赤っぽくなるらしい

しかし今年の鱒は鰯を食べているので

身はあまり赤くならないのだという

本当か嘘かわからないが

食べ物によって色がかわるのは

ありそうな話ではある

身近なところでは卵の色が

鶏の飼料によって変わると聞かされる

 

鱒というのは岩魚なのだとも聞くが

川の魚が海に下るのかと聞くと

鮭のように下って戻ってくるのだという

富山湾で海の生活をして

逞しくなって川に戻ってくるらしいが

ちょっと調べてみると

海に出ない岩魚もあるそうだから

なかなか簡単な話ではなさそうだ

 

ともあれ富山湾は黒部の水が流れ込み

栄養に富むいい場所だと聞く

そんな話の好きな釣り好きの叔父が昔いて

いい釣りをするには山を守らないといけないと

落葉樹の山々を守る活動を熱く語った

釣り仲間の開高健のこともいろいろ聞いたが

実際のところは開高さんの釣りは

大したことはないんだと言っていた

父方の三男だったので三郎といい

登山や釣りなどのアウトドア好きだったが

ある時急逝し葬儀にも呼ばれなかった

 

父方の親族関係のつきあいには謎が多く

人の生死のことでも連絡がまるで来ない

父が兄弟姉妹とつき合いが悪かったかららしいが

とにかくスムーズに進まないので

こちらも積極的につきあうのはやめた

祖父母の葬儀までは出たが

おおかた死に絶えた叔父たち叔母たちの

葬儀も知らなければ墓のありかも知らない

カミュの『異邦人』の主人公ムルソーは

「私のせいじゃないんです」というセリフを言い

これが有名なセリフとして知られるが

わたしの親戚の中に蔓延るさびしい縁遠さは

これっぽっちもわたしのせいではない

生長して散っていった猫の子たちや

蛇の子たちや猛禽類の子たちのように

二度と仲睦まじく再会することのない

さびしいさびしい父方の家族たちだった

 

 

*「ますのすし本舗 千歳」






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