森はあざやかに青い

 

 

雨が

降っているから

といって

嵐のようでないかぎりは

やはり

すこしは

ちょびっとは

散策に出る

 

歩かねばならないのだ

 

歩かねばならないのだ

 

折口信夫の

こんな言葉を思い出しながら･･･

 

わたしは旅行に出なければなりませぬ

まづ花巻へ行つて

それから遠野の方へ移つて

だんだん

淋しい

歴史のない口碑や

迷信や

破格の言語の多い處を探り入つて行かう

と思ひます

 

淋しい

歴史のない口碑や

迷信や

破格の言語の多い處･･･へと

探り入って行こう

と言っているのを見て

本物だったんだな

この人

と

思う

 

迷信のなかへ分け入って

理性は

“生きて”帰って来れるのか

どうか

 

破格の言語のなかに

出口なしに

たっぷり浸りきってから

どんな言語して

単語界へ

帰ってくるのやら

 

折口信夫

ほど

ではない

が

雨のなか

林のほうへ

森のほうへ入り込むと

人はまばらで

あるいは

皆無で

 

林はあざやかに青い

 

森はあざやかに青い