2022年5月18日水曜日

空気がほんとうに微細な水晶玉を散らしたように光る


 

 

 そしてひたすら自分の天使の性質のために・・・

         エミリー・ディキンスン

 

 


 

生涯で

最高の美女に会ったのは

パリのとあるカフェで

 

ひとりでコーヒーを飲んでいると

あきらかにアラブ人とわかる

褐色の肌の若い女性が隣のテーブルに来た

長いが長すぎない黒髪に

黒い宝玉のような目

これ以上はあり得ないほどの

完璧なバランスの目鼻立ち

 

天使が舞い降りたようで

あたりの空気が一変してしまった

周囲にいた人たち皆が

黙って彼女を見てしまうほどだった

 

これだからパリはすごい

と思った

 

たったひとりの美女の出現で

空気がほんとうに

微細な水晶玉を散らしたように光るのを見た

スパングルを無数に宙に撒き

世界がラメやグリッターに埋めつくされる瞬間を見た

生きていながら

そのまま至上の美であり得る人が

こんなふうに隣のテーブルに舞い降りてきて

笑みまで振りむけてくれるのを

わたしは確かに生きた

 





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