2022年5月22日日曜日

必要もなかったのに

 

 

人は皆有用の用を知りて、無用の用を知ることなし

                                                                         荘子

 

 

 

必要もなかったのに

上野駅構内で本屋に入ったら

やっぱり

何冊も買って帰ることになってしまって

やれやれ

と思いながら

ふらつきながら

エキュートの店を見ていたら

餡舎ひよ子

という

どら焼き屋があったので

作っているところを

ガラス越しに見ていた

うまそうだったので

ふたつ

買って帰ることにした

 

うちに帰ってからすぐ食べたら

うまかった

上野駅に行った時の

じぶん用のちょっとしたお土産には

これから

いいかもしれない

 

必要もなかったのに

本屋にも入ってしまい

何冊も買ってしまい

そのうえどら焼きまで買ってしまい

必要もなかったのに

出費を重ねてしまったが

こういうのがほんとに

必要なかったのかといえば

そうは思っていない

 

なにからなにまで

いまのじぶんを作っているものは

必要がなかったことばかりの溶けまじりだと

よくよくわかっている

 

必要がなかった本を読んだり

必要がなかったところへ行ったり

必要がなかった人たちに会ったり

そんなこんなの積み重ねをしていくうちに

あれこれ必要がなかったことばかりが溶けまじって

いまのじぶんができてきた

 

いまのじぶんが必要なじぶんだ

とまでは

断言するつもりはない

だって

当初のじぶんの考え方や見通しから見れば

いまのじぶんは

道草や

迷いに迷った迷路辿りの末の

出がらしの出がらしもいいところの

なれの果て

まったく不用な

どうかしちゃった

歩く影のようなものでしか

ないから

 

いまのじぶんは

どう見ても

必要のなかったじぶん

要らなかったじぶん

超絶こんなはずじゃなかったじぶん

だから

 

そんな

あり得ない

あるべきでないじぶんが

必要もなかったのに

上野駅構内で本屋なんかに入って

何冊も買ってしまって

そのうえどら焼きまで買ってしまって

うちに帰ってからすぐ食べたら

うまかったりしたのだから

これはこれで

けっこう

筋が通っているかもしれない

 

蛇の道は蛇

無用者の道は無用者

 

必要がないものごとにかけては

わたしは

なかなかのプロだ






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