歳をかさねていくと
人は時間というものの奇蹟や
驚異とでもいうものに
すなおに驚くようになっていく
驚けるようになっていく
老いたシャトーブリアンは
「わたしはすでに時間でしかない」
と書いた
岡井隆は
あれは
まだ老いたとはいえない頃だったが
あらかじめ
老いに老いた短歌形式で
蒼穹は蜜かたむけてゐたりけり時こそはわがしづけき伴侶
と歌った
さても
とにかくも
とにもかくにも
時間とはなんだろう?
時間をどう考えたらいいのだろう?
などと
思ってみるだけで
人は
まったく飽きるということが
なくなっていく
そのなかに
人が現われて
しばらく
在り続けるのも
奇蹟
人がいなくなり
時間だけが
在り続けているかのようなのも
奇蹟
人びとが消えても
在り続けているかのような時間を
意識しているのなら
わたしも
時間だろうか?
やはり
それも奇蹟
奇蹟が
奇蹟のなかで
奇蹟を意識し続けている
このありようも
奇蹟
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