2022年6月22日水曜日

私ひとりがすでに多数


  

Je est multiple.

Montaigne

 

 


主体は

ラテン語では

subjectumというが

これは

物の下にあり続けるものをいう

 

このことから

変化に抵抗するもの

という属性が付与されることになる

 

とはいえ

人間の主体は

たえざる変化や変質を続ける

 

モンテーニュは

うまく言ったものだ

Je est multiple

 

フランス語の

ふつうの動詞活用も無視して

まるで

20世紀の詩のように

 

「私なるものは複数者だ」

と訳して

伝わるのか

「私なるものはいろいろな人間でいっぱいだ」

ぐらいに言ったほうがいいのか

「私は大勢」

程度で伝わるのか

 

イエスに

名を尋ねられた悪霊は

我が名はレギオン

大勢いるゆえに

と答えるが

モンテーニュは

もちろん

これを下敷きにしているだろう

 

しかし

私たちの数が多い

のではなく

私=多数であり

私ひとりがすでに多数なのだ






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