梅雨らしくなってきて
雨が降っていない時でも
空は雲で覆われ
太陽が見えない日が続く
昼でもうす暗くなって
紫や青の濃い紫陽花は
いっそう鮮やかになる
じめじめし通しで
けっこう暑かったりもするので
なんとなく懈くなるし
物憂くもなる
ちょっと出かけるにも
傘を持たないといけなくて
めんどうくさい
こんな梅雨の日々を
いっしょに住んだエレーヌは
肌が日々潤って
すてきだと言っていた
彼女はそもそも
かんかん照りが大嫌いで
薄曇りの天気こそ好きだったので
日本の梅雨ほど素晴らしいものは
母国フランスには望み得ない
と喜んでいた
変なことを言うなあ
と思って聞いているうち
そんな見方もあるのかなあ
と思うようになっていき
梅雨が来るたびに
またあなたの好きな梅雨が来たよ
と言ったりするようになった
そうして今は
あんなにあなたの好きだった梅雨が
ことしもまた来たよ
と薄曇りの戸外にむけて
言葉もなく思いを告げたりする
五月のツツジのピンクも好きだったし
春秋のバラも大好きだったが
梅雨の頃の紫陽花も大好きで
「きれいです」
「本当にきれい」
と日本語でよく言っていたが
「感動します」
とも言っていた
日本人ならあまり言わない
そんな表現のしかたが
聞いていて面白かったが
いちいちの花の色やすがたに
深く感動するのを
わたしはかたわらで見続けて
季節の美しさへの
感動のしかたを学び直していた
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