2023年12月24日日曜日

「人生はあなたが思う程甘くない」って事ばかりです。

 

 

 

 

アサヒ生ビール「マルエフ」の年末のCMに

竹内まりやの「元気を出して」という

古い古い曲が使われている

竹内まりや自身の歌うヴァージョンが使われている*

 

39年前

1984年リリースで

もともと

薬師丸ひろ子が歌っていて

レコード『古今集』に収められた**

 

全体としては

失恋した人を励ます歌詞になっていて

CMでは

曲の最後の部分の

 

♪人生は  あなたが思うほど悪くない

  はやく元気を出して あの笑顔を見せて

 

という歌詞を聴かせている

 

いろいろなヴァージョンがあるが

芳根京子のCMヴァージョンと

松下洸平のCMヴァージョンの

代表的なものを

それぞれ

ボーッと見ていると

両者とも

ひとりで家庭的な居酒屋に入っていき

そこでアサヒ生ビール「マルエフ」を飲む運びになっている

 

家庭的な雰囲気のある居酒屋ながら

店内はある程度広さがあって

小さな居酒屋にありがちな

常連さんばかりが溜まってしゃべっている澱み感がない

店主夫婦もひとあたりがよく気持ちがいい

 

今回のこのCMの最大のポイントは

温かみがある家庭的な店でありながら

常連が店内をし切ってしまっているあの澱み感や

入って行けなさ感を

見事に払拭しているところだろう

つまり

今の日本においてさえ現実には絶対にあり得ない

架空の居酒屋を創出している

 

これに気づいたひとは

ああ

やっぱり

おとぎ話を演出しているんだな

これらのCMも

見ていくことになる

 

わたしの場合は

おとぎ話が大好きなので

こう気づいてからは

俄然

細かく見ていくことになる

 

おとぎ話だから

竹内まりやの歌の内容に密着させ過ぎながら

見ていく必要はないのだが

芳根京子にしても

松下洸平にしても

若い勤め人がひとりで居酒屋に入っていくあたり

軽い失恋の後かもしれない

 

ひとは

仕事にも

人生にも

いろいろと「失恋」するものだから

いわゆる恋愛における失恋よりも

もっと幅はひろく見ておいて

いいだろう

 

松下洸平のほうは

住んでいる場所の最寄り駅から降りてきて

 

♪人生は  あなたが思うほど悪くない

はやく元気を出して  あの笑顔を見せて

 

と歌いながら

夕暮れ

線路沿いを歩いて行く

彼のわきの線路を電車が出発していくが

電車の行先標には「多摩川」とあるので

東急多摩川線の沿線のどれかの駅だとわかる

使われているのは鵜の木駅で

温かみのある郊外の駅近くの雰囲気が

よく出ている

 

芳根京子のほうは

居酒屋のわきの電信柱に「本町三丁目」の表示があるので

東京都

渋谷区本町三丁目ではないか

と思われる

「本町三丁目」は日本中にいくつもあるだろうが

電信柱の表示板から

都内のものだと思われる

となると

最寄り駅は初台だが

都庁から新宿中央公園を抜けて少し歩き

山手通りを越えても着く

 

芳根京子にしても

松下洸平にしても

ひとりで居酒屋に入って「マルエフ」を飲んだかと思えば

CMの終わりのほうでは

自宅でひとりで「マルエフ」の缶ビールを開けて

長めのグラスに注いで

また飲んでいるので

CMの次のたくらみとしては

このふたりをどこかで出会わせて

 

♪終わりを告げた恋に すがるのはやめて

  ふりだしから また始めればいい

 

という歌詞どおりに

新たな恋のはじまりを描こうとするのか

とも思わされる

 

 

それにしても

「元気を出して」は

みごとに

バブルに入っていく時期の

余裕のある軟弱系の若者向けの歌詞である

 

♪幸せになりたい気持ちがあるなら

明日を見つけることはとても簡単

 

少しやせたそのからだに

似合う服を探して

街へ飛び出せば

みんな振り返る

 

チャンスは何度でも訪れてくるはず 

彼だけが男だけじゃないことに気づいて

 

「彼だけが男だけじゃないことに気づいて」

などと言ったら

現代ではいろいろな批判が来るだろう

「少しやせたそのからだに似合う服」というのも

オブラートに包んでたくみに言わないと

ヘンな地雷を踏みかねない

 

きっと

いろいろと批判が出ているだろうな

と思って調べてみたら

やはり


       「人生はあなたが思う程甘くない」って事ばかりです。

 

とか

 

最悪です 毎日後悔しています

 

というコメントが出ていた

 

鬱病や躁鬱病のひとたちからは

もちろん

もっとしっかりと強烈な批判が出ていた

 

 

竹内まりやさんの「元気を出して」という曲の、

CMになっている部分の歌詞が嫌いです。

    「人生はあなたが思うほど悪くない 

       はやく元気出してあの笑顔を見せて」

↑この歌詞が本当に嫌い過ぎて

CMが流れる度に憂鬱な気分になります。

 家族に「嫌だよね」と言ったら

「え?そう?」というような反応をされたのですが、

私と同じように「嫌い」という人は居ませんでしょうか。

個人的には

「あなたが思うほど悪くない」と決めつけられるのも、

「はやく元気出して」と回復を急かされている感じがするのも

嫌いなのです。

アレルギーのように、

CMが流れる度にゾワゾワしてしまって憂鬱です。

 

何となく判ります。

鬱の人には絶対に言ってはいけないセリフですし、

歌詞自体は失恋してどん底にいる友人?への励ましですが、

そういった時にかける言葉ではないと思います。 

溺れかけている人に

「頑張ればあなたでも泳げるよ」と

能天気に言っている感じがします。

脱線しますが、

「街へ飛び出せばほら、みんな振り向く~彼だけが男じゃない」

という部分も気になります。

失恋直後の女性(男性も)は

心に大きな穴が開いている分落とし易く、

それを狙う色男のカモになりかねません。

 

双極性障害(躁鬱病)で、

鬱の状態が多いから余計に苦手なのかな、と思いました。

 「溺れかけている人に

『頑張ればあなたでも泳げるよ』と能天気に〜」

の部分に非常に共感しました。

 

 

マスを相手にするものの終焉が

あちこちで認識されている現代では

みだりに昔の歌謡曲を使ったりすると

どうしても

こんな反応も招くことになる

 

平気で39年前の歌謡曲を使ってしまう

というところに

じつは

制作者側の“老い”が露呈しているのかもしれない

たとえば

1945年に終わった大平洋戦争から

約39年前というと1906年なのだが

その前年と前々年の1905年-1906年は

なんと日露戦争をやっている

中高年の時代意識では

バブル期頃から現代まではひと続きだと思ってしまうものだが

20前後の若者たちは

いわゆるコロナ禍の4年間以前は

もう戦前のように感じているのだ

大平洋戦争だって

1941年12月から1945年8月までの

約4年弱しか続いていないのである

 

 

ちなみに

「元気を出して」の歌唱自体については

薬師丸ひろ子のほうが

透明感のある声ではるかによかった

薬師丸ひろ子は近年でもこれを歌っているが

安定した非常にいい歌い方をしている***

若くデビューしたアイドルは

なかなか安定した歳の重ねかたをしないものだが

彼女の場合は

役者としても歌い手としても

いい成長ぶりを見せて50代終わりになろうとしている

 

 

 


 

 

*アサヒ生ビール「マルエフ」2023年年末CM(芳根京子)

https://www.youtube.com/watch?v=wkOhfLu43Zg

*アサヒ生ビール「マルエフ」2023年年末CM(松下洸平)

https://www.youtube.com/watch?v=g04TJCxUKqI

**薬師丸ひろ子「古今集」

https://www.youtube.com/watch?v=64__Hir1uJE

***薬師丸ひろ子 2021年版

https://www.youtube.com/watch?v=kh4R7jYyQYU

 

 



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