2023年12月25日月曜日

サン=シェリー・ダプシェの教会でのクリスマス・ミサ

 

 

  

Donc, si vous me croyez, mignonne,
Tandis que vostre âge fleuronne
En sa plus verte nouveauté,
Cueillez, cueillez vostre jeunesse :
Comme à ceste fleur la vieillesse
Fera ternir vostre beauté.

Pierre de RONSARD Mignonne, allons voir si la rose

 

 

 

 

クリスマスで

もっとも忘れがたいのは

1995年のもの

 

エレーヌ・セシル・グルナックの故郷

フランスのロゼーヌ県のサン=シェリー・ダプシェの

エレーヌの妹マリ=テレーズの夫婦の家で

10人が集まってのクリスマス

 

パリから来た

エレーヌの姉アンリエットは

一族のなかではいちばん料理がうまいと知られていて

マリ=テレーズと

その娘サンドラが手伝うかたちでつくり

前菜のあとに

メインディッシュが三皿も続くような

豪勢なクリスマスディナーができあがった

 

夜遅くなってか食べはじめたものだから

ひととおり食べ終えるだけでも

深夜の2時ごろまでかかる

そのあとも

デザートが続くので

3時半ごろに

ようやく食べ終えることになった

 

いろいろな料理があったのに

不思議なもので

というか

情けないことに

というか

不甲斐ないことに

というか

アンリエットの夫のピエールとぼくがいっしょになって

午後に精を出して殻を開けた生ガキや

腹のなかに栗を詰めて焼いたウズラのことしか

覚えていないのだ

 

クリスマスディナーを

夜遅くなってから食べはじめたのは

その前に

教会での夜のクリスマスミサに出かけたからだ

 

標高935mから1126mのサン=シェリー・ダプシェは

クリスマスの時期ともなると寒い

日が暮れてから外に出ると

歯ががちがちと鳴るほどに震えが来る

夜のミサに出かけるのに

スキー用の分厚いダウンを貸してもらって

それを着ていった

 

クリスマスとはいえ

ミサなどというものは

そう面白いものではないし

記憶に残るものでもない

けれども

教会でのその夜のミサでは

一生忘れられないほど印象深いものになった

日本人のぼくが

フランス人たちのなかで

妙に目立ってしまったのだ

 

というのも

この年

1995年の117日に起こった

阪神淡路大震災の衝撃は

フランスのチベットとも呼ばれる

中央山塊のなかのど田舎のサン=シェリー・ダプシェにも届いていて

教会の神父が

1月に起こった大震災の犠牲者に

あらためて

クリスマスの今夜も祈りを捧げましょう

非常に稀なことに

今夜

当教会には日本人がひとり来てくれてもいます

などと言ったものだから

教会のなかにいたひとたち皆が

ぼくのほうを見て

それから

手を合わせて

祈りを捧げてくれたものだった

 

19951224日のクリスマスイヴの夜

日本から遠く離れた

まったく縁のないような

フランスのど田舎のサン=シェリー・ダプシェの教会で

短い時間ながら

フランス人たちが

日本の阪神淡路大震災のために祈ってくれたということを

あれから28年も経て

こんなところに

ちょっと書き止めておいてもいいだろう

 

あの教会に集った主だった大人たちが

もうすっかり死に絶え

あるいは

すっかり老いさらばえた

いまになって

28年もむかし

あんなこともあったのだと

記しておいてみても

いいだろう

 

そうして

ついでに

ついでに

「じきに来る老年」を嘆く

ロンサールのあのバラの詩を

カッサンドルへのオードを

添えておいても

いいだろう

 

 

 

 

カッサンドルへのオード  

      ピエール・ド・ロンサール

 

恋人よ、みにゆこう、
けさ、あけぼのの陽をうけて
紅の衣をといた、ばらの花
今宵いま、赤い衣のその襞も
あなたににた色つやも
色おとろえていないかと。

ああ、ごらん恋人よ、
何とはかない、バラの花 
大地にむくろをさらすとは!
おおつれない自然  
この花のいのちさえ、
あしたから、ゆうべとは。

だから恋人よ、
ぼくのことばを信じるならば、
水々し、花の盛りのその齢に
摘め、摘め、あなたの若さを、
この花ににて、じきにくる老年に
あなたの美しさも褪せるのだから。 

(窪田般弥・高田勇訳)



 


Mignonne, allons voir si la rose

Pierre de Ronsard

 

Mignonne, allons voir si la rose
Qui ce matin avoit desclose
Sa robe de pourpre au Soleil,
A point perdu ceste vesprée
Les plis de sa robe pourprée,
Et son teint au vostre pareil.

Las ! voyez comme en peu d'espace,
Mignonne, elle a dessus la place
Las ! las ses beautez laissé cheoir !
Ô vrayment marastre Nature,
Puis qu'une telle fleur ne dure
Que du matin jusques au soir !

Donc, si vous me croyez, mignonne,
Tandis que vostre âge fleuronne
En sa plus verte nouveauté,
Cueillez, cueillez vostre jeunesse :
Comme à ceste fleur la vieillesse
Fera ternir vostre beauté.



 

 

https://www.youtube.com/watch?v=ge7CZ1A2KUQ

 

https://www.youtube.com/watch?v=tbfO8les0v8


https://www.youtube.com/watch?v=oT4PLrF0utc&t=3s




 

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