2017年12月25日月曜日

墓碑、霧

[2001年4月]

遠景へと沈んでいった可能性の妻  ひとりになると青い森は染み出し

残されなかったお前の径は伸びて  そこ此処に立つヴェールの亡女ら

流れぬ霧と音絶えた川を眼の奥に  歩くのも忘れきって揺らすうす紙

湿って 妻に届く音も色を戻さず  霧の色うすい一部に甦る雪激しい

晦のあやまち、さらにあやまって  逝く逝かぬ風の死の誕生の淵光り

初めて黒玉のぬめりを我子となし  霧の手より賜れば鳴る荘厳の森?

見えぬまゝに あゝ見えぬままに  わずか色うすい手となって寄す霧

湿って 逆巻き登っていく思いの  おもて鋭く揺曳する面差しの温み



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