[2001年4月]
木の切られていくかなしさ
壮年じゃないか、ひとならば
りっぱな木たちが
安い模型セットみたいな
つまらぬ家をほっ建てるのに
ここでもあそこでも殺戮されちゃった
おおぶりのいい花をつけていた
となりの桜が倒されたのには まいった
花のさかりに切りやがったのだ
隣りあっていた柿と銀杏の
やわらかなうす青葉のさびしさよ
もういないのだぞ あの桜
また来ん春に 花のたよりの届くころ
あいつを思って宴をしよう
ひとしおだったことしの花も
最期と知ってのことだったか
こま切れにされた輪切りの胴の
小山をつくっている夜ふけ
そっとかたみを拾いにいって
花のたわわな枝数本
握って戻ってきて見ると
たしかにたわわに花ざかりだが
どれもぐったりしおたれて
くしゃくしゃの皺の花びらが
浜に寄せ来たさざ波の
終わりの白のふつふつの
こころへ消え行くさまのよう
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