風邪をひいたりインフルにかかったりすると
体調どころか思いがひどく悪化して
見るもの聞くもの触れるものすべてへの反応が
じぶんでも驚くほどネガティブになる
家の廊下を歩いてトイレに向かう時には
ロシア革命下で地下の処刑室に向かう廊下を
まだ一縷の望みを抱いて歩いていく気持ちになる
裸になってシャワーを浴びようと白い浴室に入ると
殲滅収容所でシャワーを浴びてさっぱりしろとの名目で
裸にされてぶるぶる寒さに震えながら
白い部屋に入る人たちのひとりになった気になる
今どんな天気だろうとカーテンの隙間から空を覗けば
水爆ミサイル降り注いでくる直前の
なにも知らないでいる最後の人類のひとりに感じる
布団に横たわって痰につまる気管を意識していると
じつはもうじぶんが死んでいて
これからどんどん身体が腐敗していく過程に入った気になる
体力のすっかり落ちた身体で起き上がって
水を飲んでみたり熱を計ってみたりしながら
寒い部屋の中でいろいろな家具が静まりかえっていたり
昨日使ったお皿がテーブルの上に置きっぱなしになっていたり
洗濯したものが鴨居に吊るしたままになっていたりするのを見ると
今じぶんが急に心不全かなにかで死んで倒れてしまったら
腐っていく死体の臭いがこれらに染み込んでいくのかと想像する
じぶんのまわりに集まってきてくれて
つかの間であれ生活を構成してくれたこれらのものたちに
ふいに非常な愛情と感謝を感じたりして
それなのにじぶんの死体の臭いを染み込ませたりしたら
ひどいことだなァだれかにリサイクルしてもらうこともできないな ァ
そんなことを痛切に思うので、よし!
死ぬのなら部屋の中ではなくどこか外へ出て野垂れ死にしよう
そうすれば通行人が見つけてそうそうに死体は処理されるし
この家の家具たちや本たちやその他いろいろなものたちも
とりあえずはきれいなかたちでリサイクルに回されていくだろう
使用感が付いたものであってもどれもこれも丁寧に扱ってきたし
ふつうに古物屋や古書店に並んでも遜色ないはずだし
なにより次に使う人に良かれという気持ちが入っているはずで
これらに次に接する人たちに小さくても幸せをもたらしてくれるだ ろう
…そんなことを思い
体力もすっかり落ちて咳き込みもひどくて
少しよろけている状態で
しっかり着込みもしないで
ほとんど零度に近い寒さの街へ死にに出ていこうとする
不思議と強い衝動に突き動かされ
途中で
は?
と気づき直してじぶんを押さえ込んだことが
何度もある
風邪やインフルはこれほどまでに
じぶんにとっては命取りで
身体よりも心や思いの内部からすっかりじぶんを瓦解させていく
生活やそれを支えるじぶんの思いや心は
いつも活力に満ちて
あかるく
生き生きしていないといけない
そんな要求がじぶんに対してあまりに強いので
ほんの少しでも不良状態が出てくると
100パーセントじぶんを捨て去ろうという激しい衝動がある
この衝動によって
人生という長い旅のあちこちで
さまざまなものを破壊し
手放し
ゼロへと戻り続けた
ほんのちょっと怪我をしただけで
腕や足を切断して捨てるべきだという思いがあまりに強く湧き
実際そのように行動してきた
こうした衝動を生み出す強力な内部との戦いが
わたくしの人生であった
風邪やインフルから語り起こして
なんと大げさな!
と見えるかもしれないが
ちょっとした他人からのハガキの文言や
こちらを見つめた目の雰囲気にさえ
激しく攻撃を開始する内部の衝動が爆発し
その後の異常な展開を押さえ込むのに多大なエネルギーを要したか ら
大げさでもなんでもない!
わたくしは今しているような分かち書き行為に
本当に助けられてきた
アンリ・ミショーもル・クレジオもかつて
書くことは悪魔払いだと記していたが
正確だ
書く者はだれでも内面の途方もない破壊衝動に苛まれている
じぶんも
じぶんの人生の発端から現在までのすべても
社会のあらゆる部分
法律、慣習、言葉、仕草から文化といわれる他人のおしつけ までの
すべてへの徹底的な拒否反応と破壊衝動で内部は煮えくり返っ ている
政治活動に断じて参加しまいとするのは
始めたが最後手が付けられない暴走が始まると知っている からだ
毎日数百人規模での処刑を命じ続けたレーニンやトロツキーの
処刑命令書が20世紀の後半に発見され
なにが民衆のよりよい社会建設のための闘争か
という完全批判の強力な根拠になったものだったが
そう、社会をよりよくしていこう主義者たちのヒーローの
チェ・ゲバラのような人間だって
ゲリラ組織維持のためにメンバーの処刑をこつこつやっている
まことにあらゆる組織は悪でしかなく
硬直した大組織を変革ないし破壊するための新小組織を作り
そこに当面は参加したところで
やはり同時にその新小組織の裏をかく個人的な抵抗を展開しつつ
既成大組織と新小組織を摩擦させたりぶつけたりして
ゆくゆくは双方が痛手を負うような道筋を拓いていかねばならない
そう、個がどれだけ誤った人類の主流を歪ませられるか、 そこにしか
総体を見晴らす意志のある個意識の地上での生の目的はないだろう
そうした観点から見る場合
虎ン膚政権のあれこれのやり口は
一見いい加減で乱暴で非理性的な印象をつねに維持しながら
じつは権謀術数に優れ
捏造された最大の問題国の喜ぶ酒都認定をしてやりつつ
その国の近未来の滅亡を見事に組み込みおおせた
世界規模での大分断の象徴のひとつとなった半島で
怨念とそれにもとづく戦闘用組織が張り巡らされ切った状況下で
とりあえずの大規模衝突や徹底破壊でもないかぎり は
あり得もしない融和や統一の幻影を見させようとした運動会の さなか
半島近くの海にはベスプッチ国の戦闘艦船が最大規模で集結し
表向きは演習と見せながら春からの臨戦態勢にすでに入った
フランス革命時に全欧に対して戦闘状態に入った共和国さ ながら
ベスプッチ国では国内でも見えない戦争が展開中で
国のかたちを保ちながら脱皮していく事態にすでに入っている
これから起こされていく途方もない世界大乱の
操り糸はすでにほうぼうに設置さ れた
…ところで
わたくしは
今
風邪をひいてもいなしインフルでもない
それらの経験を思い出しながら
まったく別の理由で
まったく別の意図を持って
蝶よ花よの文弱向きの詩歌とは相容れない単語や表現をここに撒い た
理由があるからである
すべてには理由があるからである
風邪をひいたりインフルにかかったりすると
体調どころか思いがひどく悪化して
見るもの聞くもの触れるものすべてへの反応が
じぶんでも驚くほどネガティブになるが
風邪をひいたりインフルにかかったりしていないし
体調どころか思いがひどく悪化してもいないし
見るもの聞くもの触れるものすべてへの反応が
じぶんでも驚くほどネガティブになってもいないとなると
まったく別の衝動が爆発して
それに突き動かされることになる
…さあ、わたくしは
ナニをこれらの単語並べの中に埋め込んだのだろうね?
単語並べをブログに載せ続ける
わたくしの分かち書きを暗号表に使用し続けている全世界の諸君よ ?
0 件のコメント:
コメントを投稿