2018年2月5日月曜日

ポリュビオスの目を持とうとしながら



ポリュビオスは
世界史の父と呼ばれるが
人生はなかなか複雑だ

ギリシアのメガロポリス出身で
アカイア同盟の
指導者のひとりだった

マケドニアとローマの戦争の際
ポリュビオスは
マケドニア側についた

ローマの大勝に終わったので
ポリュビオスらギリシア人1000人が
人質になってローマへ送られる

人質たちは第一級の知識人だったので
ローマは丁重に遇し
スキピオ家が彼を迎え入れた

ポリュビオスは後の小スキピオ
すなわちスキピオ・アフリカヌスの
養育を任されることになった

第3回ポエニ戦争の際
小スキピオとともにカルタゴに
行ったのはポリュビオスの意思か

そしてカルタゴが
完膚なきまで滅ぼし尽されるさまを
この大歴史家はみずから見ることになる

カルタゴ人にまだ生き残りはいたのか
それとも赤子から老人まで殺し尽し
土と死体とが混ざった風景だったか

二度と草させ生えないようにと
土壌に塩が撒布されるのは
カルタゴ人の全員の虐殺の後だったか

軍人でも政治家でもあったポリュビオスは
敗戦国への大殺戮や土壌破壊を前にしても
甘い見方はしなかっただろう

しかし見続けるうちに
人の命が大事だとか人の運命はどうだとか
そんな目では人類は見えないと気づいただろう

西地中海の雄カルタゴ消滅と同じ年に
東地中海の商業の中心コリントも
ローマによって滅ぼされる

この二都を滅亡させることによって
地中海世界の覇者ローマが出現するが
もちろんここからヨーロッパが生まれていく

さて現代のカルタゴはどこか
さて現代のコリントはどこか
現代のローマは本当はどこか

ポリュビオスの目を持とうとしながら
これから行われていく攻撃と殲滅と
続く殺戮から我々は目を逸らさないようにしよう



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