2018年2月15日木曜日

今となってはちょっとそんなことも悔やまれる


  
イングランドの田舎をまわっていた頃
あるパブに
ディック・ターピン*が来た店
と書かれてあるのを見た

十八世紀の有名な追剥らしい

どの道でも
一頭地を抜いた存在に
なっておくべき
ということか

その村で出会ったキャサリンは
30代後半だったが
胸に顔を埋めると
中年男の臭いがした
陽射しのつよい昼下がり
いっぱいに摘んだデイジーを抱きしめて来ても
花の匂いは胸には移らなかった

ディック・ターピンが臭うぞ

そんなことは
彼女には言わなかったが
すこしは洒落た口調で
言う機会が持てなかったものかな
今も悔やむ

キャサリンには息子がふたりいたが
どちらも
俺の種じゃない

今となっては
ちょっと
そんなことも悔やまれる

                                     
*Richard "Dick" Turpin



0 件のコメント: