イングランドの田舎をまわっていた頃
あるパブに
ディック・ターピン*が来た店
と書かれてあるのを見た
十八世紀の有名な追剥らしい
どの道でも
一頭地を抜いた存在に
なっておくべき
ということか
その村で出会ったキャサリンは
30代後半だったが
胸に顔を埋めると
中年男の臭いがした
陽射しのつよい昼下がり
いっぱいに摘んだデイジーを抱きしめて来ても
花の匂いは胸には移らなかった
ディック・ターピンが臭うぞ
そんなことは
彼女には言わなかったが
すこしは洒落た口調で
言う機会が持てなかったものかな
と
今も悔やむ
キャサリンには息子がふたりいたが
どちらも
俺の種じゃない
今となっては
ちょっと
そんなことも悔やまれる
*Richard "Dick" Turpin
0 件のコメント:
コメントを投稿