わたくしの死は深い。
まだ、そこからすっかり出たことはない。
そして、明るい。わたくしの
死は。
そこには海もない。
山も川もない。
空もない。
集落も
村も
町もない。
そして、明るい。わたくしの
死は。
死はわたくしを知らない。
振り向いてもくれない。
人のことを
じぶんのところに
奪ったくせ
して。
ひとりだけ、明るく。
わたくしを照らしもせずに。
わたくしには鏡もない。
死の顔は見えるのに
わたくしの顔は見えない。
明るい
わたくしの死は
たゞの
ひかりにも見える。
まぶし過ぎて
見えづらい時もあるが
知っている
見えづらいことが見えているのを。
見るのは
視覚によるのではない。
見え方が見えることを通さずに
見えることなど
ないと。
わたくしの死は深い
と
言っておく。
死を
誑かすために。
まだ、そこからすっかり出たことはない
と
言っておく
まるで陥穽に落ちたかのように
思わせておくために。
そして、明るい
とも
言っておく
死が
愚かで
甘言に弱いのを
よく
知っているから。
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