広田宗之は複数の大学で教鞭を取っていた
中程度のレベルの大学の学生たちも昨今学業態度が悪くなっている
理解も習得度も低下が続いている
それでも就職率が比較的よいので学生たちに危機感はない
それを宗之は気にしていたが
他の低レベル校よりはまだよかった
とはいえ学生が他の大学の大学院に進もうとする際には
ほとんど合格できないので
そういう院進学を試みる学生たちだけが愕然たる事実に気づく
その大学のある学生と飲んだ時
「この大学ってプライドが高いから…
と学生は言った
どういう意味なのか
力もないのにプライドを持っている者が多いと言っているのか
宗之は少し探りを入れる意味もあって
「でも最近どんどんレベルが下がっていてね…
そう言ってみたら
「でも、就職はいいようだし…
と返ってきたので
宗之はこの話を続けるのをやめた
どの会社でも再優秀な者だけを採りはしない
社内で底辺に位置する者も採っておかないと階層が維持できない
みなが部長クラスの能力を持っていては困る
汚れ仕事やうだつの上がらない者
仕事は最低限はできるがそれ以上にはならない者も採っておかない と
ピラミッドは維持できない
宗之がよくわかっていたのは
この大学の学生がそういう社員によく向いていることだった
就職率がよいのにもいろいろ意味合いがある
若者はなにかと力を落としがち過ぎるところもあるが
根拠もないのにプライドを持っている場合も多い
自分の能力についての確実な観察と計量にもとづく
できることとできないことの見極めからしか
プライドは来ない
できることを確実に遂行し
できないかもしれない少し背伸びした仕事も
ある程度の粗さまでで収めてやり遂げようとする覚悟と
そう狂っていない見積もりの度合いを
プライドというのだから
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