羽田空港にむかう早朝のモノレールの中で
てかてか頭のビジネスマンの頭が
朝日のつよい光を反射して
ほんとうに
てかてか
てかてか
時に
ぎらぎら
ぎらっ
と輝いていた
ハゲではない
テカである
テカとハゲでは気負いが違う
積極的だ
前進的だ
未来的なのである
テカる気満々である
たゞ髪がないとか
剃ったとか
そういうのではテカらない
どんなクリーム
塗りこんでるんだろうな、あれ
特別な油かもしれないぞ
いろいろ思わされる
モノレールの向きの変化にあわせて
陽光の射す角度が変わる
てかてか
から
ぎらっ
また
てかてか
また
また
ぎらっ
ひらがなじゃなくって
ギラッ
テカテカ
かと思うと
また
急にひらがなに戻って
ぎらっ
てかてか
小学生の頃
みんなで歌って帰った歌のひとつ
♪おやじのハゲ頭
思いの中を
あれが流れる
モノレールの中の
今そこにいるビジネスマンの
てかてか頭
あれがプルーストのマドレーヌ効果を発揮して
ぼくの思いは今
20世紀文学の華のひとつ
無意識的回想なるものの渦の中へ
なんとでも
長くも短くもできる
あの歌が流れる
♪お化けは消える
消えるはランプ
ランプは丸い
丸いはおやじのハゲ頭
でもいいし
♪消えるは幽霊
幽霊は白い
白いはパンツ
パンツは臭い
臭いはトイレ
トイレは狭い
狭いは押入れ
押入れは怖い
怖いはお化け
お化けは消える
消えるはランプ
ランプは丸い
丸いはおやじのハゲ頭
でもいい
ピンポンやバドミントンのように
なるべく長く続けさせるのが
子どもたちにとっては勘どころで
ストンと
あまりにはやく
おやじのハゲ頭に
行きついてはいけない
ヴァージョンはいくらでもある
いくらでもできる
ムリしたギリギリな迂廻路を辿ったほうが
みんなの称賛は大きくなる
何年も何年も
登校下校の時間や
休み時間は
こんなふうな戯れ歌の時間だった
ラップっぽい時間だった
どことなく
プロレスラーっぽさもないではない
体格のいい
てかてか頭のビジネスマンを前にしながら
こんなふうに
思いの中はプルーストしていた
無意識的回想していた
マドレーヌしていた
コンブレーしていた
失われた時を求めて…!
モノレールの向きの変化にあわせて
陽光の射す角度は変わり
てかてか
から
ぎらっ
また
てかてか
また
また
ぎらっ
ひらがなじゃなくって
ギラッ
テカテカ
かと思うと
また
急にひらがなに戻って
ぎらっ
てかてか
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