杉村春子みたいな
オバサンの法学のセンセと
もうちょっと若い
でもやっぱり十分にオバサンな法学のセンセが
お弁当を使いながら
近ごろの政権について話している
それを
センセなんかやるより
金魚屋かアイスクリーム屋でもやるほうが
似合ってるなァという感じの
やっぱり法学のオジサンのセンセが
聞いている
―憲法学者をバカにしてるわよねェ
―なんでもできるって思ってるのかしら?
―ちょっとコワいわよねェ
―お歳だったナニナニ先生なんか生きてらしたらタイヘンねェ
―そうよ、暗殺だっていうわよねェ
―ほォ
―なんでもかんでも「暗殺!」ってねェ
―それにすぐ「革命だ!」ってねェ
―ほォ
―言ってらしたものねェ
―言ってらしたものねェ
―過激なのよねェ
―過激だったわよねェ
―そうですかァ
こんなやりとりを
わきで聞いていると
ずいぶん
ノンキなもので
いつのまにか
小津安二郎の映画のなかに
こっちまで
入り込んでしまっているような
小津の時代だって
政権は
とんでもなかったんだが
映画のなかでは
あのとおり
ノンキなような
しっとりしたような
お昼御飯に
蠅よけの
網がかけてあるような
(そして
(だれも家の中に
(いないような
となり近所で
犬が
ひとしきり鳴いて
黙った後は
ひっそり閑としてしまう
ような
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