……ふたたび
大きな雲のむこうに
べつの大きな雲が立っており
遠くからの夕陽を受けて上の部分だけが
わずかに赤紫に染まっていた
むかしモンブランの麓の村を訪れた際に見上げた
赤紫に染まる山麗を思い出し
真夏というのに肌に沁み入るようなあの冷涼と
まぢかに控えたディナーへの期待とが
今のことのように蘇った
山村の小店の金髪の娘の頬は林檎のようで
あゝこちらのほうへ人生を
すっかり向け変えてしまわなければならない…
と決意しつつあった
あの時のように
長いながい年月を経て
……ふたたび
大きな雲のむこうに
べつの大きな雲が立っており
遠くからの夕陽を受けて上の部分だけが
わずかに赤紫に染まっていた
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