起き続けて
夜が深くなっていく時には感じないが
まだ日の上らぬ頃
はや過ぎる目覚めをしたりすると
その上
ひどく静かだったり
冬場で寒かったりすると
気分は
かならず
底なしの深いおののきに陥っていく
孤独など怖くもないが
孤絶というべきものに自分が成り切ってしまっていて
つまらぬおしゃべりをして
慰めあう誰かもおらず
じぶんの中であれこれと思いを拾い上げては
それをしばし玩具にして
冷え冷えした孤絶を慰撫するのなど
いまさら
なんにもならないとわかり切っている冷めぐあいで
布団の中にある身体が
まだふつうに動くからいいようなものの
これがさらに老いて
現われ出た病や
どこかになお潜んでいる病などが皮膚の下に溜まって
筋肉も動きづらくなり
関節もいちいち痛むようになり
なにをするにも息切れするようになったり
血圧の絶えざる高下を感じるようになったりすれば
今でさえ底なしに深いおののきだというのに
いったいどうなってしまうことかと
暗澹たる思いに囚われてしまう
フランチェスコ法王の半生を描いた
「ローマ法王になる日まで」という映画では
アルゼンチンが軍事政権下にあった時
政府に反対する人々が逮捕後
感染病予防注射だと偽られて睡眠薬を注射され
手足を縛られ
すっかり眠ってしまったり
うとうとしたりしている状態で
軍用輸送機に積み込まれ
夜
つぎつぎと大海原に突き落とされていった場面が
とりわけ静かに恐ろしく
印象深かったが
あんなふうに
まだ夜明けまで間のある時間に目覚めた意識は
孤絶におののいて
人生とか
運命と呼ばれることもある
巨大な軍用輸送機めいたものに積み込まれてきて
いまや
ついに夜の闇へと放り出されて
大海原のようななにかが
あるのか
ないのか
それともやはり底なしなのか
どこかへと
もう時間もなくなってしまったかのように
落下し続けていく
いや
たぶん
底はあるのだが
それは
着いた時には意識の絶えてしまう
底
天国
のことかもしれない
意識も
記憶も
私感覚も
もう
なくなってしまっているところ
ならば
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