一年中なにかしら花は咲いていて
人間の世では花屋というものさえあり
そこでは溢れんばかりに冬でさえ花が見られ
花なんてこの世ではあたりまえのものだと
つい思ってしまうのだが
ほんとうはひとつの花がある茎につくというのは
とんでもなくたいへんな偶然と
奇跡との混じりあいの結果ではないのか…
そう思って見つめていた花園は
とある谷へのなだれ落ちる傾斜の途中にある園
もう九十八年ものむかし
友人の初岡有が純愛を賭けて自殺した処
ひさしぶりに訪れて
愚かとも思えた純愛死を遂げた友の
まだ頬に赤みの残るような初々しい顔が
懐かしく甦った …というより
どこへも去ってなどいかなかったあの顔が
わたし自身として永遠となっているのがわかった
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