2018年7月17日火曜日

暑かったんだよ、あの日は、ほんとうに…


暑い暑いとみんな言っているし
じっさいに暑いし
むかしより暑くなったと数値でも示されるけれど
よっぽどむかしのほうが暑かったと感じるのは
ぼくがどこか間違っているからだろうか

クーラーなんて
教室にも学校の図書館にもなかったし
国鉄の電車にもなかったし
地下鉄にもなかったし
もちろん家にもなくて
クーラーのあるところといえば
郵便局の大きな本局ぐらいで
学校の帰りに用もないのに本局によっては
お腹や背中を丸出しにして涼風をいっぱいに受け
しばらくしてからまた気合いをいれて
熱気の中へ飛び出していったりしたものだった

家庭用クーラーが普及し出してからも
機械の下に水が溜まるタイプで
しばらくするとタンクが満タンになるので
それを捨てないといけない
がたがた音がしてうるさい割にはよく冷えず
扇風機の大型版のような感じだったし
だいたい子ども部屋には置いてなどもらえず
居間にしかなかったから
宿題だの勉強だのをしなければいけない時には
熱気むんむんの部屋に戻って
本や辞書やノートを汗だらけの手や腕にぺたぺたさせながら
不快も極みでやらざるをえなかった

だれがなんと言ったって
あの頃のほうがよっぽど暑かったと思うのだが
人間の思いや感覚なんてほんとに流されやすいもので
ことしの夏こそはいちばん暑いってなことに
世論というか言説というか巷のうわさというか
そういうのはなっちゃっているらしい

そういえば「暑い、暑い」と言っていた子どものぼくに
どこかのおじいちゃんが言ったことがあったな
戦争が終わった日なんざもっと暑かったもんだぞ
あの日はほんとに暑かった
あんなに暑い日に敗戦だなんて言われたって
戦争は終わったなんて言われたって
正直なところハァーって溜め息しか出なかったな
暑かったんだよ、あの日は、ほんとうに…



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