三好達治の『測量船』の中の散文詩『晝』は
あんまりおもしろくないもので
どんな仲だったかわからない「彼女」が
乗合馬車に乗って去っていく場面を
あんまりきれいに見えない
漢字仮名交じりの文字並べで
あんまり魅力的な効果を出さないで
書き進められていっていた
内容は三好達治の創作というより
『ボヴァリー夫人』あたりから借りた枠組みに
小説風な仄めかしを施して
散文詩にでっちあげたものかと思われる
日本近代の散文詩は
はじめのあたりは地味に
つまらなく書き出して
最後でパアッと
詩的な開花をさせることが多いが
この『晝』の場合もそんなところがあって
ふつと、まるでみんなが、馭者も馬も、
河原に沿うて、並木のある畑の中の街道を、
というふうに
「ああ時間がこんなにはつきりと見える!」
という文が爆発している
これは収穫といってよいだろう
日本の文芸の中でも
世界の文芸の中でも
「時間」を見えるものとして記した例は少ないし
「こんなにはつきりと見える!」とは
世界的な詩達成に数えられるべき快挙だ
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