2024年12月3日火曜日

愚者列島

 


 

フランス社会は

ユダヤ人への迫害や差別行為に厳しい

 

しかし

なにがあっても

ユダヤ人だけは信じるな

と教えてくれたのは

フランス人たちだった

 

迫害も差別もしない

しかし

絶対に

信頼はしない

 

東洋語学校の図書館で司書をしていた

エレーヌは

借りた図書を返さないのが

ユダヤ人学生たちだけだと気づいた

返してきても

ページを切り取っていたり

破損していたりした

 

エレーヌの姉の

パリ在住のアンリエットや

その夫のピエールは

ユダヤ人の店では

騙されないように気をつけろ

とたびたび注意してくれた

卵を買えば

そのうち一個や二個は

絶対に

腐ったものを混ぜて売りつけてくる

それがユダヤ人だと

 

親しくなったフランス人たちは

おおっぴらには言わないが

だれもが似たような注意をしてくれた

 

迫害も差別もしない

しかし

絶対に

信頼はしない

 

絶対に

信頼はするな

 

人間本質洞察音痴の

日本人には

ここのところが

まったく

わからない

 

わかる気もないし

わからねばならないことさえ

わからない

 

捏造だと知らずに

アンネ・フランクの日記を

有り難がる

愚鈍さが

人間的だなどと

思い込む愚者の列島である

 

 




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