2024年12月5日木曜日

ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の「非常戒厳」宣布と解除

 

 

 

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が

3日夜に「非常戒厳」を宣布したが

これを受けて

韓国の国会はすみやかに

非常戒厳解除を要求する決議案を可決した

驚くことに

ユン大統領は4日の午前4時半頃

国会の要求を受け入れて非常戒厳を解除すると談話発表

午前5時頃に閣議が開かれて非常戒厳は解除された

 

奇妙な事態が発生していた

 

宣布された「非常戒厳」を受けて

戒厳司令官の陸軍大将名で出された「布告令」6事項のうちの1

 

国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなどの

一切の政治活動を禁じる

 

とあったのだから

非常戒厳が宣布された以上

国会が開かれてしまうこと自体が違法である

 

大統領の今回の唐突な「非常戒厳」宣布の是非とはべつに

大統領権力の行使において

形式上

これは正しいこととは言えない

 

これを

民主主義の府である国会の勝利

と呼んでしまうのならば

大統領に「非常戒厳」の宣布権を与えている韓国の法に

論理矛盾があることになり

法体系レベルでの重大な瑕疵の存在が疑われる

 

 

◎◎

ともあれ

大統領権力と国会権力が

このように拮抗する瞬間を目撃できるだけ

韓国の政治空間には

日本の政治空間よりも自由を守りうる可能性がある

 

日本で

緊急事態宣言が発せられたらどうなるか?

大統領権力に等しいものは内閣権力だが

与党勢力はこれに合流する政党とあわせて圧倒的な数を持つので

国会権力は内閣権力と同一歩調でしか動かず

韓国の議会が今回行ったような

緊急事態宣言解除を要求する決議案は

可決どころか

案の提出さえされない

日本では緊急事態の来る前から

すでに穏やかに

独裁体制が準備されてしまっている

 

 

◎◎◎

さて

戒厳司令官の陸軍大将名で出された「布告令」には

先に触れた1事項を含め

次の6事項があった

 

1 国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなどの一切の政治活動を禁じる

2 
自由民主主義体制を否定し転覆を企てる一切の行為やフェイクニュース世論の操作、虚偽の扇動を禁じる

3 
すべての言論と出版は戒厳司令部の統制を受ける

4 
社会の混乱を助長するストライキやサボタージュ、集会行為を禁じる

5 
ストライキ中だったり医療現場を離脱したりしたすべての医療関係者は、48時間以内に本業に復帰して忠実に勤務し、違反した時は戒厳法によって処罰する

6 
反国家勢力など体制転覆勢力を除く善良な一般国民は、日常生活での不便を最小化できるよう措置する

違反者に対しては、戒厳司令官の特別措置権によって令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索ができ、戒厳法の罰則によって処罰する

 

 

大統領ユン・ソンニョルの真意はまだ明らかでないが

おそらく

410日に投開票が行われた第22代国会議員選挙で大勝し

300議席中の175議席を獲得した

「共に民主党・共に民主連合」の議員たちを

「自由民主主義体制を否定し転覆を企てる」者たちとして

また「フェイクニュース世論の操作、虚偽の扇動」を行う者たちとして

「戒厳司令官の特別措置権によって令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索」し

「戒厳法の罰則によって処罰」して

すみやかに国会から追放し

国会で野党が過半数を占める「ねじれ」現象を解消して

保守系与党「国民の力・国民の未来」の優位を

勝ち取ろうとしたものだっただろう

22代国会議員選挙の結果

「今回の総選挙で尹大統領は国民から審判を受けた」

「各種改革を推進しなければならないが、野党の協力なしには国会で何もできず、国民を直接説得することも容易ではない」

などと「朝鮮日報」で書かれていたのを思えば

8ヶ月が過ぎたこの年末には

ユン・ソンニョルは政治的に追い詰められていたと見るべきである

 

 

◎◎◎◎

しかしながら

「非常戒厳」を宣布しておきながら

国会による非常戒厳解除要求決議案の可決を受けて

はい、そうですかと

すぐに

「非常戒厳」を解除してしまうユン・ソンニョルの態度も

かなり異様である

 

このところ一日も心穏やかな日はなかった

というユン・ソンニョルが

熟慮せずに

誰かに唆されて「非常戒厳」を宣布してしまった

という見方もあり得るだろうが

この「非常戒厳」宣布行為自体が

ひとつの大きなフェイクなのではないか?

この裏で

韓国は国ぐるみでなにを行ったのか?

あるいは

誰にむけてなにを表明したのか?

むしろ

そちらのほうを考えてしまう

 

 





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