地下まで
深夜
夜明けも近い頃
ゴミを捨てに降りて
また
エレベーターで上がってくる
どうしたことか
ひとつ階下の階のボタンも
間違って押してしまった
降りなければいい
だけの話だ
ところが
そのことをサッと忘れて
ひとつ階下で
降りてしまった
そんなふうに
階下に降りてしまったことを
忘れて
つくりの同じ通路を通り
自宅と同じ場所に配置されている
階下の家のドアを
開けてしまった
開いた!
その時点では
そこが自宅だと思い込んでいる
しかし
違う!
と
すぐ
気づいた
自宅の玄関には
あかりをつけたまま
出てきた
いま開いたドアのむこうには
闇があった
玄関からは
廊下がのびていて
奥には
部屋があるはずである
自宅ならば
その部屋にも
あかりをつけたままにしてある
ところが
いま開いたドアのむこうには
闇だけがあって
あかりは見えない
そこで
あ!
階を間違えた!
誤って押してしまった階下に降りてしまい
自宅とおなじ配置の
階下の家の前に来てしまって
ドアを開けてしまったのだ
と気づいた
音を立てないように
ソッとドアを閉め
階下のその家の前を離れ
エレベーターホールへとむかって
エレベーターで
自分の家の階へと上がった
これだけのことである
これだけのことではあるが
思い出すと
ちょっと
恐ろしくなってきた
なんで
階下の家のドアは
施錠されておらずに
開いていたのか?
深夜
夜明けも近い頃
だと
いうのに?
しかも
中は真っ暗で
闇しか見えなかった
ドアは
かるがると開き
闇だけが
あった
入ろうと思えば
入れたのだ
闇の奥で
なにが待っていたのか?
ドアの鍵もかけずに
入ってくるのを
待っていたものがあったのか?
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