登場人物が
視聴者であるこちらのほうを向いて
セリフを語ってくる
小津安二郎の映画で特徴的な撮り方のひとつで
このことから来る違和感は
だれもが感じるし
多く語られてきた
登場人物からのセリフが
まるで
歌舞伎の花道となったかのように
映画内のフィクション空間と
視聴者のいる現実空間とを繋いでいて
小津歌舞伎の独特な効果を感じさせられる
先週もなんどか
こうしたシーンを見直していて
これまであまり気づかなかったことを
新たに感じた
登場人物がこちらに語ってくる時
視聴者に過ぎないこちらは
その時映画に映されていない対話相手にも
なってしまっていたのだ
映画内空間が
単にこちらに繋がってきているだけでなく
映画の物語内の架空の一人物にも
じつは成ってしまっている
小津安二郎が仕掛けてくる構造は
もう少し深掘りして
考え直していけそうだと
また
思わされた
彼は寺山修司と同じように
視聴者が
映画をどこまでも拵え物であるのを忘れないように
いろいろと仕掛けた
映画内に別世界の現実があるかのように
ボーッと見ることもできるが
これは作り物なんだぞ
これはフィクションだからな
そう言い続けているのが
小津安二郎の映画なのでもある
0 件のコメント:
コメントを投稿