お茶やらコーヒーやら
自動で出てくる機械があるので
いつも職場で
紅茶を淹れて飲んでいる
紅茶を飲むことにしているのは
いろいろと試した結果
緑茶も不味かったし
コーヒーも不味かったからで
紅茶がいちばん
まずさが目立たなかったから
サーヴァーとか呼ぶらしいが
そんな機械がそこに入ってから
もう半年くらいは
使い続けてきている
それが
ついこの間
いつものように
紅茶を淹れて飲んでいたら
なにか口の中でひっかかる
なんだろうと思って
抓み出してみたら
棒のようなもの
枝のようなもの
茶の茎や枝かなと思って
よくよく見たら
なんと
胴からもげた虫の脚
脛のトゲトゲがきれいに残っている
形状から見て
どうやらゴキブリの脚
なにかの甲虫類の脚とも
見えないこともないが
ゴキブリだろうね、これ
うわぁと思いながら
紙コップの中を見直すと
触角らしきものも一本
紅茶の中に漂っているでござる
それも抓んで出し
ティッシュの上に
脚といっしょに並べてみる
どこかの河川脇での
バラバラ死体発見みたいに
事務の人に伝えると
あたり前だがそれからは大変
業者に電話がいき
すぐにサービスマンが来て
謝りながら機械を開けて
分解していろいろ調べてみたり
掃除やら消毒やらしたり
虫が入らないように
テープで応急処置をしたり
業者の青年と話してみると
どれだけ密閉しようとしても
後ろには熱気を逃がす排気口があり
扇風機が回っているので
そこだけは閉じようもなくて
虫が侵入するのは避けがたいとか
（じゃ、そもそも欠陥機械じゃん？
（とは思いながらも
そりゃそうですね
とこちらものんびり聞いているので
業者クンは妙に困ってしまっている
けれどもそんなものでしょ
虫は機械には入るものでしょ
暖かくてなにか中にありそうで
そりゃあ、虫は入るわさ
子どもの頃から慣れ親しんだ光景
食べ物に虫が入ったり
わけのわかんないものが入ったり
でも知らずに食べちゃって
後で気づいてあああああああ
とか思ったり
ゲッとなったり
それでも生きてきたんだよね
虫なんてものはあちこちに入るんです
ゴキブリの一匹や二匹
紅茶やコーヒーの隠し味になったって
まぁオオゴトじゃないんです
このくらいで負けちゃダメだろ、胃腸よ
地上にはもっと怖いものがいっぱいで
騒ぎ立てるような気力は
そっちのほうへこそ向けないと
イカン、イカン
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