2022年1月6日木曜日

「もういいかい?」


 

わたくしにも

また

わたくしの

ボエームの時代もあれば

狂騒の時代もあった

 

それらが

みな

過ぎ去ってしまった今

フッと

読み直してみる

こんな歌

 

かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭

 

寺山修司の

『田園に死す』の一首

 

かくれんぼの鬼に

なって

なったまゝで

「もういいかい?」

くり返している

うちに

時は流れ

時は崩れ

時は変わり

「もういいよ」

とは

ついに

だれも言ってくれないうちに

老いさらばえて

しまって

 

あゝ

また村祭りをやってる

 

さまよい出て

きてみると

 

みんな

どこへ行ってしまったんだか

だれを探しに来たんだったか

わからないままに

 

じぶんひとり

まだかくれんぼの鬼のまゝ

「もういいかい?」

「もういいかい?」

口癖に

なってしまっていて

思い癖に

なってしまっていて

くり返している

「もういいかい?」

「もういいかい?」

 

どこからも

だれからも

返事は来ずに

ただひとり

「もういいかい?」

「もういいかい?」





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