Summer surprised us, coming over the Starnbergersee
With a shower of rain; we stopped in the colonade,
And went on in sunlight, into the Hofgarten,
And drank coffee, and talked for an hour.
T.S.Eliot The Waste Land, 1922
夏はシュタルンベルガーの湖上をわたって
わたしたちを驚かした。わたしたちは柱廊に立って雨やどりし、
それから陽のさすなかを通ってホーフ・ガルテンに入り、
それからコーヒ飲んだ、それから一時間ばかりお喋りした。
(深瀬基寛訳)
1月はJanuaryだと英語で習い
フランス語ではjanvierだと習い
ドイツ語でもjanuarだと習う
どれもラテン語のjanuariusから来ていて
ふたつの顔を持つ神
ヤヌス神に捧げられた月を意味する
ローマ神話のなかでも長老格で
威厳に満ちたヤヌス神は
もともとは専ら家庭の戸口を守る神で
家に入ってくる者を一方の顔で検分し
家から出て行く者をもう一方の顔で送り出す
こうして家の安全を守り
行き来の無事を保とうとする神だった
しだいに守備範囲を広げさせられ
町の門や港の警備など
入口全般の守護神とされたのは
まだいいとしても
通り道の神だということから
出産の神もやらされるようになり
ついにはものごとのはじめ全般を
守るようにさせられていった
1年のはじまりも任されるようになり
ローマ人は新造の暦の最初の月に
ヤヌスの名を付けてしまうことになった
ローマ人がヤヌスに求めたのは
はじまりの意味だけだったかもしれないが
新年という新しい時間=家の入口で
古い年=家から入ってくる者を検分し
古い年=家へと回顧のために出て行く者を
見守る務めもひそやかに続けているのが
じつはjanuariusであるかもしれない
英語のJanus-facedという語の
「猫っかぶりの」という意味や
「裏表のある」という意味を思い出してみると
1月というものの底には
別の意味でふたつの顔を持つヤヌスも
しっかりと潜んでいそうではある
「4月は最も残酷な月」と歌ったエリオットは
ふたつの顔を持つヤヌスの月1月については
どう歌っていたのだったか
歌っていなかったか
猫っかぶりの1月
はじまりであるかのようで
じつはなにも永遠に始まらない非情きわまる月・・・
などとエリオットのかわりに
いま此処で歌っておいてやっても
いいのだが
0 件のコメント:
コメントを投稿