美しかった頃のシリアに遊んだ際
アレッポの古物屋で買った
ちょっと場所違いなヴェートロ・ディ・ムラーノ
その中に蒸留水を湛えて
今年の早春の
最もうららかだった昼下がりの陽の色どりを
乱反射させ
中を覗き込んでしばし楽しむ
蒸留水は
原発事故以後すぐに台湾の会社から購入した蒸留器で
もう八年ものあいだ作り続けているもの
ヴェートロ・ディ・ムラーノはvetro di Murano
ユーラシア大陸の東の列島では
ヴェネツィアングラスと呼ばれてきたもの
春にもいくつもの段階があって
早春もしだいに
たゞ“春”と呼ぶべき時期に入りつつある
その直前の
冬のような寒さの戻り
桜たちは
ひとあし先に開かせてしまった花もありながら
多くはまだ蕾のまゝ
ほんの数日だが
一斉の開花に向けて
舞台裏で呼吸を整えたり
お化粧直しをしたりしている
0 件のコメント:
コメントを投稿