2018年3月1日木曜日

ねねね


家具の裏を伴って
まだ肌寒い
春の野辺に散策に出てきている

小川の水も
ほそぼそしていて
忘れてなどいないだれかの怨念が
どこかから
割った焼き芋から立つ
湯気のように
ひととき
ホカホカと息をふき返す

洟をかんだり
痰を吐かれたりして
くちゅくちゅ丸められたティッシュペーパーが
あたしをちり紙と呼んで!
などと
時代にそぐわない
切ない哀願をしてくる

ちり紙なら
せつなくさびしい愛欲の裏長屋生活を
いっしょにしておくれかい?

おやおや
いつのまにか着いているのは
昔の置屋のあったあたり
溝川沿い
もう
溝川さえもなくなって
コンビニの駐車場になっている

埋められた溝川が
「あんたがたの哀しみを
「また吸いたい…
今また
洩らしたような

哀しい風景の減った国はさびしい

これから春
そして

と移っていくはずの時期だから
野辺には
見つかりようもない
彼岸花

かわりに
野にも
街にも
そう
国じゅうに
これから
かざぐるまをいっぱいにしてやろう
あたしらは暗い決意をする

そうして
墓でいっぱいにしてやろうね
国まるごと
野辺送り
して
やるんだよね


(と
(わたくしにさっきから憑依していた
(かわいい青いお顔の霊が
(申しておるんでございますよ




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