ようやくヴィリエ・ド・リラダンの作品集を読み終えると
黒川ヨッシーニ氏は
地区Bへ行ってみる気になったものの
ヨッシーニ氏の住む地区Gからは
急いでも6年ほどかかる地区なので
ロドロ亭のパンを
いくらひさしぶりにたっぷり食べてみたくなったからといって
6年もかけるのはどうかと悩んでしまった
とはいえ
もう靴の紐も結んでしまっているし
いくら大好きとはいえ
やはりリラダンの作品群をあらためて熟読してみると
理解に手古摺るところもあって
いつのまにか3年半は音もなく過ぎ去っていたのであるから
とにかく少しでも戸外に
それも
どこか他の地区あたりまで足を伸ばして
などという気になったのであった
などと
などと
黒川瑠璃子はワープロで記し続けてみて
お兄ちゃん
好夫兄ちゃんを思い出し
ヨッシーニ
などとイタリア人っぽく呼び替えてみる自分をちょっと哀れにも思 い
指を止めてちょっと立ち
廊下の涼しいところに置いてあるラデュレのマカロン*の箱から
柚子味のひとつを摘んだ
同じ街に住んでいながら
行こうとすれば6年もかかる地区があるのは面白いし
そんな世界にお兄ちゃんの好夫改めヨッシーニが生きているのは
じっくり想像しようとするとウキウキしてくる感じだった
瑠璃子の頭にはすぐに続けて
地区Gから地区Bに行くまでの間に
ふつうの行き方をしようとすればどうしても
戦乱地域を横断しなければならないという話が浮かんできて
こちらの話のほうが頭も心もワクワクさせるようだった
これはひとつ
つぶさに想像を広げて
書かなきゃいけないかもな
と瑠璃子は思った
《《《★ あたし、小説書いちゃおうかな ★》》》
そう瑠璃子は考え
ちょっと
気まぐれにスマホを手にとってみたら
来ていたメールのひとつに
Youtubeのオススメ動画があって
それを開くと
ジル・バーバーが歌うジャタンドレJ’attendrai( 待ちましょう)**が
流れてきた
*La Durée http://www.laduree.jp/ boutiques
**Jill Barber : J’attendrai https://www.youtube.com/ watch?v=86222qXgNKI
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