2018年3月14日水曜日

水蜜桃のしたたりのような澄んだ唾液

 
  
読まれない本はいつか青緑に発光して
ソーニャの幼かった頃の部屋を
(そこはいつも深夜だというのに…)
陽のゆらゆら洩れ入る
海の洞のようにあかるくすることだろう
ぼくらもそろそろ
次の出発を考えなければならない
もう行くべきところなどないなどと
20世紀末の失敗した人類のような
安手の煙草の匂いのする呟きを
自他に禁じて
水蜜桃のしたたりのような澄んだ唾液を
また唇と歯茎の間にいっぱいに溜めて




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