2022年3月16日水曜日

『奴婢訓』

 

 

ものを考えたり

なにごとか言ったり

書いたりする際

どうしてもアタマのどこかに

模範となるものを保持しておく必要があるが

わたくしの場合は

とにかく人を小バカにする

あの大ヴォルテールの口ぶりや

大変な戦争時代を大バカにし通したブレヒトや

なんといってもスウィフトの

あの『奴婢訓』の

全身爪の先まで批判とおちょくりの

こんな口ぶりが

そんな模範だったりする

 

 

御主人の呼んだ当人がその場に居ない時は誰も返事などせぬこと。お代りをつとめたりしていてはきりがない。呼ばれた当人が呼ばれた時に来ればそれで十分と御主人自身認めている。*

(奴婢一般に関する総則)

 

葬式、喧嘩、絞首台へ引かれていく男、嫁入り行列、車で引き回される曖昧屋の女将、などを見物したいことがある。前を通り過ぎる時、急いで窓を上げようとする。運悪く窓が開かない。こうなったのはこっちのせいじゃない。大工が悪い。若い女は物見高いものときまっている。紐を切って、誰かに見られたら、責任を大工になすりつけるより、仕方がない。それでちっとも悪いことなんかありはしない。

奥様の脱ぎ捨てた肌着を頂戴して着る。光栄の至りだし、節約になるし、何処にも困る所なんかありはしない。

(小間使)

 

フランスとイギリスの小説、フランスの伝奇物語、チャールズ二世とウィリアム王の御世に物された喜劇全部を、お嬢さま方に読ませ、その天性を柔らげ、心優しくする、等々。

(家庭教師)

 

 

 

 

*ジョナサン・スウィフト『奴婢訓』(深町弘三訳、岩波文庫)

  Jonathan Swift : Directions to Serveants,  1745






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