2022年3月30日水曜日

ひらがな書きのばかになっていく

  

 

満開になった桜を

ぼーっと眺めていると

ばかになっていくような気がする

ひらがな書きのばかになっていくような気がする

 

こんなときには

ことばをかきあつめ

ひっしにさくらをあらわそうとして

もちこたえないといけない

そうしないと

もっとばかになっていく

ひらがな書きのばかに

もう止めようもなく

なってなってなっていってしまう

 

むかしのひとや

近代でも短歌なんかつくる人が

和歌短歌なんかでさくらをことばづかみしようとしたのは

たぶんそのため

ひっしにさくらをあらわそうとして

ひらがな書きのばかになっていくのを

なんとか止めようとしたため

 

なので

思い出す

あれこれの

ひらがな書きのばかになりきってしまわないための

かずかずの

ひっしの努力を

あれや

これやと

 

 


与謝野晶子

何となく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな  

 

若山牧水

うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山ざくら花  

 

永井陽子

あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ 

 

正岡子規

隅田川堤の桜さくころよ花のにしきをきて帰るらん  

 

高野公彦

夜ざくらを見つつ思ほゆ人の世に暗くただ一つある〈非常口〉 

 

三ヶ島葭子

咲きのかぎり咲きたるさくらおのづからとどまりかねてゆらげるごとし

 

紀友則

ひさかたの光のどけき春の日にしづ(ごころ)なく花のちるらむ 

 

与謝野晶子

清水へ祗園をよぎる花月夜こよひ逢ふ人みな美くしき  

 

釈迢空

山ぐちの桜昏れつゝほの白き道の空には、鳴く鳥も()ず  

 

藤井常世

日はさせど飢ゑゐるごとき心にてすこしつめたく桜さくなり 

 

素性

見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりけり 

 

築地正子

背信の古傷なめて冬過ぎて春は桜とまた言ひてをり  

 

伊勢大輔

いにしへの奈良の都の八重桜今日九重ににほひぬるかな 

 

与謝野晶子

春の夜に小雨そぼ降る大原や花に狐の出でてなく寺 

 

永福門院

花の上にしばしうつろふ夕づく日入るともなしに影きえにけり 

 

穗村弘

「キバ」「キバ」とふたり八重歯をむき出せば花降りかかる髪の背中に 

 

紀貫之

やどりして春の山べに寝たる夜は夢のうちにも花ぞちりける  

 

高野公彦

弘法寺の桜ちるなか吊鐘は音をたくはへしんかんとあり 

 

与謝野晶子

花散りて葉いまだ萌えぬ小桜の赤きうてなにふる雨やまず

 

藤井常世

咲き急ぎ散りいそぐ花を見てあればあやまちすらもひたすらなりし

 

馬場あき子

花散りて実をもつ前の木は暗し目つぶれば天にとどく闇ある 

 

 






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